【2/28追記】
この話の出所はZuzana Roithováというチェコの政治家ではないのか、という推測を立てましたが、そもそもZuzana Roithová自身がEU議会へのCEに関する質問をしたのでは、という指摘がありました。確かにそうであるので、前々からこの「China Export」のウワサはあったのだろう、と思います。なので、その点に関しては訂正をしたいと思います。
ちなみにこれは余談ですが、CEマークはEU側が証明を行ったりするのではなく、あくまで「EUが定めた安全基準を満たすか」が達成できていればいいのであり、場合によっては、認証者は自社でもよいわけです*1。自己認証もありうる、というわけですね。EU側も定期的なチェックはしているとは思うのですが。
さて、先日、こんな話題が広がっておりました。
「CEマーク」というのは、「製品をEU加盟国へ輸出する際に、安全基準条件を満たすことを証明するマーク」*2のことで、「Conformité Européenne」の略ですが、中国が「China Export」、つまり「中国からの輸出品」ということで使っているんだとか。で、その際の見分け方が「CE」の間の開き具合なんだとか。うーん、ありそうな話ですねえ。
ところが、こんなツイートをたまたま見つけました。
@syurin_nagatuki CEマークに似た中国の輸出マークがあるというのはデマ又はジョークかも。判断材料をお知らせまで→https://t.co/2YGB6ZQb50 https://t.co/VIeP8prVyE https://t.co/TOtYIbhvpq
— ありふれたレン廃 (@lenhai) 2016年2月26日
このまえの、WHOのタバコ規制の記事でご指摘いただいたlenhaiさんのツイートなのですが、どうもこの話は「デマ又はジョーク」ではないかという話です。
正直、ご提示されている各種リンク先を見れば話は終わりなのですが、このブログは「情報をまとめる」ことを大切にしているので、日本語でも正確な判断材料を伝えていければと思います。
実はこのCEマークが「China Export」だという話、結構昔からあり、2008年にはEUの議会がわざわざ答弁しています。
要所だけざっくり訳すと以下の通り。
①CEマークを「China Export」の略称だという誤解が広まっているようだが、我々はそのようなマークが存在することを確認していない。
②CEマークの基準を満たしていないにも関わらず悪用して貼付している製品が存在することは認識している。
②一方で、CEマークの基準を満たしているが、「CE」ロゴが規定寸法や比率に適っていない場合もあることも把握している。
もうこれだけで今日の記事を終わらせてもいいんですが、要するに、「CE」が悪用されているケースがあることはあるが、それは別に「中国の輸出」を示しているわけではない、ということです。逆に、ロゴの取り扱いが不適切で、ニセモノっぽい「CE」を貼り付けている、ちゃんとした製品もあるっていうことです。
今回話題になっている画像の初出は、もはやアーカイブでしか残っていないのですが、以下のサイトのようです。2010年10月16日のアーカイブ。
アーカイブにも画像のリンクが切れているので、「おそらくそうだろう」としか言えないのですが、まあ多分このあたりなんだと思います*3。
上記のサイトはルーマニアのCEなどに関する証明機関のページのようです。現在もこのサイトは存在していて、「China Export」の項目も残っていますが、画像は取り下げられています。
しかし、EU議会が話しているように、悪用や誤使用はあるものの、「China Export」を表しているなんて話は、明らかには存在していないわけです。このウワサの出所はどこなのか。
おそらく、というのが、以下の動画です。
これはチェコの政治家のZuzana Roithová*4という人の動画です。2007年12月7日のアップロード。発言自体は2007/11/15。
彼女はこの中で、「私は先週ストラスブールで全く違うロゴを見つけた」*5として、今回の話題に上がっている、「CE」の間が近寄っているマークをとりあげ、それが「China Export」であると結論付けて注意を促しています。
というわけで、このチェコの政治家の話が、お近くのルーマニアにも伝わり、ちょっと時間が空いてはいますが、今流布しているような画像が作られ、それが世界に広まった、というところが今回のウワサの着地点なのではないでしょうか。なので、ジョークというより、デマっぽい感じですね。
・今回のまとめ
○「CE」マークのロゴが不適切に使用されるケースはあるが、必ずしもそれが中国製であるとは限らない。
○恐らくは、2007年のチェコの政治家の発言が出所元である。
【2/28追記】
このチェコの政治家がEUへの質問者であり*6、質問をするということは、前々からこの「China Export」の話はウワサとしてあったということなんでしょう。なので、彼女を出所とするのは難しいかな、と思いますので訂正します。
ただ、個人的には、調べた限りでは「「C」と「E」の間が「China Export」では間隔が狭くなる」という発言は、著名人としては彼女が初めてであり、彼女の意図しない方向で、はじめはジョークとして画像が作られ、それがいつしか本気で信じられるようになった、という経緯があるのではないかと空想するわけです。つまり、いま流布している画像が作られたきっかけは、この彼女の発言なのではないか、ということです。ですが空想ですので、これは話半分で聞いてください。
この「China Export」の話、「やっぱり中国」ということで、色々なサイトにも取り上げられています。下のなんかは、ご丁寧に「CE」の間が近寄っているロゴの製品の写真ものっけて「類似したマークを数年前より中国が使い始め、誤認を招くとして世界的に問題視され始めている」としています。
しかし、見てきたように、「China Export」の略称であるとは、当のEU自体も「誤解」としているわけです。確かに中国製品のコピー製品や粗悪品は多く、それが問題にもなっているのは確かだし、きっと「CE」を無断で貼ってる中国業者もあるんでしょうが、なんでもかんでも中国のせいにされちゃうのは、たまには反論してもいいんじゃないんでしょうか。まあでも、今までが今までだからなあ。
ちょっとだけ今回思ったのが、これだけ全世界的に「CE」は「China Export」の略称として使われる粗悪品がある、と信じられていると、当の中国の某かの製造会社が、「じゃあ「China Export」として使おうじゃないか」と、模造品やらなんやらに使い出しはしないか、ということです。もしそうなったとすれば、これが、ウワサが現実を創りだす、まったく逆のパターンになります。もしかすると既に、どこかで起こっているのかもしれません。
*1:モジュールについて~CEマークの取得方法~|CEマークの認証取得|EMC測定|CEマーキング総合コンサルタント:TIJ
*2:CEマークについて|CEマークの認証取得|EMC測定|CEマーキング総合コンサルタント:TIJ
*3:画像が確認できる最も古いものは以下のページ。2010年11月7日。
Phil Chambers at Strategic Safety Systems Ltd.: Beware the CE Mark, yet again
「again」とあるので、もしかするともっと前の画像もあるのかもしれないですけれど。
*4:Zuzana Roithová – Wikipedie
*5:0:36あたり Last week, in Strasbourg, I discovered another mariking that symbolize is something completery different
*6:Written question - China Export (CE) mark feeding off the reputation of the European Conformité européenne (CE) mark - P-5938/2007
及び