ネットロアをめぐる冒険

ネットにちらばる都市伝説=ネットロアを、できるかぎり解決していきます。

黒人の少年がにらめっこをすると停学になる、わかりやすい図式に気をつけろ

アメリカの学校というのは、なかなか日本のそれとは違うところが数多くあり、我々からすると違和感を覚えるものもあります。こんな記事がありました。

jin115.com

ある黒人の少年が「にらめっこ」を白人の少女としただけで、停学処分になったんだとか。黒人の少年は遊びのつもりだったんだけど、それを白人の少女が「恐怖を感じた」ということで、学校側が停学処分にし、それに不服を申し立てた母親が裁判所に訴えたとか、そんなアメリカっぽい話です。

というわけで、日本のソースではなく元のアメリカのソースをみたいのですが、またソース元が載ってない。基本的にソース元を載せない記事の信憑性は薄くなるのが常識なので、ちょっくら調べてみましょう。

 

 

オレ的さんがソースに挙げているのは以下のサイト。

japan.techinsight.jp

これは何を情報源にしているのか明示していないのですが、掲載している画像については、「myactivism.wordpress.com」を元にしていると記載してあります。そこまで書くならリンク先を載せろよと思うんですが、とりあえず「myactivism.wordpress.com staring」で調べると、出てきました。10月1日の記事です。

 

www.fox19.com

 

どれどれ、「 It happened in September of 2014 ...」んん?「2014」って、去年の話じゃないですか日本のソースには思いっきり「先月」って書いてあるけど、誤訳もはなはだしいですな。*1

 

ということは、停学処分を受けたのは去年の話なんですね。それがなぜ今頃問題にあがってきたんでしょう。続きを読みます。

 

「A Judge denied the claim, which means as of now the suspension of the 12-year-old stands. 」とあるので、まあ恐らく、停学取り消しに関して、裁判所の却下の決定が最近下されたために、この母親のCandice Tolbertさんがメディアに訴え始めたというところなんでしょうか。*2

 

ところでみなさん、日本の「にらめっこ」は、向こうでは「Staring game」「Staring contest」なんて言ったりするんですけど、「staring」は「まじまじと見る、凝視する」という感じなので、必ずしも、日本みたいに「にらめっこしましょ、アップップ」で、ヘン顔をするわけじゃないというのは認識してください。目をそらしたり、まばたきをしても負けなので、目がひんむく感じになって、結局笑っちゃうんですけど。

 

www.youtube.com

 

なるほど、「これはゲームだ」という認識がなければ、ちょっと怖いかもしれませんよね。もうちょっと詳しい状況が知りたいものです。

 

というわけで、別ソースを拾ってきます。

www.local12.com

 

このソースはなかなか詳しいですね。少年の停学が1日のみだったことも書いてあります。

さて、当時の状況としては、少年側の証言は要約するとこんな感じです。*3

 

①自分たちはにらめっこ遊びをしていた。

②自分が女の子をじーっと見つめると、女の子は笑い出した。

③女の子は一歩下がり、自分は笑っている女の子に向かって一歩詰め寄った。

④彼女はまた一歩下がり、自分はまた一歩歩み寄った。

⑤彼女はやめてというまで笑い続け、やめてといわれたからそこを去った。

 

女の子側の証言はこうです。*4

 

①彼は友達でもなんでもない。

②にらめっこしようなんて一度も言われていない。

③何も言わないでいきなり近づいてきた。

④後ずさりすると詰め寄ってきた。

⑤男の子がやめると、他の男の子がまたやってきて、それを繰り返した。

 

うーん、決定的に証言が食い違っていますね。

しかし、この証言で重要なところは両者の食い違いではありません。この「にらめっこ」に参加していたのは「二人の少年」だという点です。記事には、「白人と黒人の男の子」と書いてあります。

 

あれれ、このニュースの重要な部分は「黒人」の少年が「白人」の女の子ににらめっこしただけで停学になったという、人種差別的なニュアンスのあるものでした。しかし、「白人と黒人」両方の男の子が関わってくるとなると、話が変わってきます。

たとえばここで、「黒人」の男の子だけ停学になったというなら話はわかりますが、記事には「the boys were given a one-day suspension」とあり、二人とも停学処分をくらったことがわかります。

しかもしかも、実際のところ、「白人」と報道されている女の子は「アジア」の血を引く女の子である*5、というところを鑑みると、この記事の根底にある人種差別のニュアンスはほぼなくなります。

 

ということを考えると、どうもこの報道は、「黒人VS白人」のわかりやすい図式を安易に用いたニュースのように思えてきます。もちろん、黒人の少年の母親は「これは人種差別的な出来事ではない」と発言しているのですが*6、その割には、一緒に停学になった白人の男の子の話をおくびにも出さず、自身のFacebookでも「Years ago Emmett Till was killed for looking at a white girl*7と白人であることを強調するなど、彼女の弁護士の差し金かもしれませんが、そういう構図に仕向けようとしている感があります。

 

なので、少なくとも1日の停学処分をくらった黒人の少年はいるけれども、必ずしもそこには人種差別としての意味はない、ということがわかりました。しかし、某かのメディアの印象操作は働いているっぽい気がします。

 

ついつい、昨今の報道を見るにつけ、「黒人VS白人」の構図はわかりやすいので、こういうニュースを見ると、「またか」と思ってしまいます。そして被害者は多くの場合「黒人」です。これは紛れもない事実です。けれども、全ての出来事にその構図が当てはまるのかと思ってしまうと、人は真実が見えなくなってしまうんですね。

 

 

 

 

 

*1:ソース記事の書き間違いも疑って、ニュース動画も見ましたが、キャスターが30秒あたりで「Last Year」に「Staring」したという風に言っているので、やはり去年の話のようです。

*2:フェイスブックもあります。向こうの母ちゃんはパワフルですな。https://www.facebook.com/candice.tolbert

*3:These kids play the staring game. He stared at her, she began to laugh and giggle. She took a step back, he took a step forward she's laughing and giggling. She took another step back, he took a step forward, she's laughing and giggling until she finally says stop and my son walked away when she said stop,”

*4:That student also admitted that he was not friends with the female student, that he never told her they were playing any kind of game, that he approached her without saying anything, and that when she backed away from him, he moved closer to her. Once that student stopped, the other boy continued with the same routine.

*5:She is, in fact, Asian, a point which the mother of the student who filed the lawsuit learned in November of last year.

*6:Tolbert said the incident is not racialとあり、学校側の都合でルールが歪められることに対する疑義だと伝えています。

*7:Candice Tolbert - Looks like we are going all the way to... | Facebook