ネットロアをめぐる冒険

ネットにちらばる都市伝説=ネットロアを、できるかぎり解決していきます。

うそはうそである、とりあえず私刑

川崎という国での事件は、少年法の在り方についても議論を呼んでいるようです。

ちょっと懐かしいがきデカのような「死刑!」コールも、この手の議論にはつきものです。

さて、今日は、そんな「死刑!」に対する記事についてです。川崎国については論じないあたりが当ブログのクオリティです。

 


裁判員の死刑判決破棄、最高裁で確定へ 長野の一家殺害:朝日新聞デジタル

 

この記事に関して、まとめブログでは、川崎の事件とからめての発言もありましたが、これについてよく引用されていたのが以下の画像です。

 

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おお、さすが子どもやな、という発言です。面白画像みたいな流れでもよく話題にでる画像です。これじゃあ電車に乗れません。

 

しかしどうもこの画像、どっかで見たことがある。と思って検索したら、こんな画像もありました。

 

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おお、ほとんどコメントが一緒じゃありませんか!これは一気にコラくさいにおいになってきました。

 

では、いつも通りの初出捜索をかけます。一番目の画像をA、二番目の画像をBとします。

 

Aの画像検索を、適当に年数を絞って検索をかけていきます。すると、2012年8月1日のtwitterの発言に対して「有名なアレじゃないですか」というコメントがついています。見たとこ、このツイートが一番リツイートついてますね。ということは、それ以前に存在してたってことですかね。

 

では、2012年7月31日以前で画像検索をかけます

 

おや、検索結果に表示されなくなりました。うーん、Google先生の検索が万能だとは思いませんが、リツイートの数から言って前述したツイートが発信元の可能性が濃厚ですな。

 

画像Aの右上には「子どもたちが最高裁見学」とあります。早速調べてみると、夏休みに最高裁では子どもの見学会をするのが恒例となっているようです。

 


朝日新聞デジタル:黒い法服で判決言い渡しも 最高裁、親子見学募集 東京 - 東京 - 地域

 

2012年に関しては、最高裁判所の元ページは既に残っておりませんが、ブログで紹介している人がいました。そこには、「7月30日(月)、8月1日(水)、2日(木)、3日(金)の4日間にわたり」とあるので、tweetの日付ともばっちりあいますね。

 

画像Aについては、使われているイラスト的にNHKニュースのものと見られます。どんぴしゃの動画が発見できればよかったんですが、さすがにそれは見つかりませんでした。代わりといっちゃなんですが、TOKYOMXの2011年に放映したものはYoutubeにあがっていました。

 


裁判官体験も... 最高裁で親子見学会 - YouTube

 

そこでは、「用意された­判決文の主文を読むなど」とあります。つまり、見学会に模擬裁判はあるかもしれないけれど、それは用意された台本を使うものであり、とりあえず死刑にすることはありえないわけです。 

 

しかし、画像Aに対するコメントになぜ「有名なアレじゃないですか」というものがついているのか。

 

これはもちろん、コメントした人に画像Bに対する記憶があったからでしょう。ツイート主もそれに対して「うん!」と元気よく返しているので、やっぱりコラなんでしょうね。

 

では、画像Aの元となった画像Bはいったいどこから出てきたものなのか。

 

今度は画像Bに対して画像検索をかけます。適当に期間を絞り込みながら検索をかけていくと、ニュー速VIPブログさんのページが、最古かなあと思われました。記事は2005年2月21日付け、元となった2ちゃんねるの投稿は2月19日を指しています。これより以前は、画像Bは元より、「痴漢 死刑」などの検索ワードでも引っかかりません。

 

では、画像Bはコラか否か。

 

この画像B、10年前ということで、あんまり情報がありません。2ちゃんねるの過去ログをもっと漁れれば詳しいことがわかるのだろうけど、ちょっと気力と知識がありませんでした。

 

仕方ないので、画像Bからわかる情報で推理していきます。

 

画像の子どもたちは中学生ぐらいでしょうか。私は裁判所マニアではないので、この画像だけで、どこの裁判所の何法廷かまではわかりません。でも中学生のわらわら具合をみると、社会科見学かなにかでしょうか。服装から秋~冬にかけてでしょう。初出の2月という時期とはあっています。

 

そして、なぜか実名で「菅○」くんの名前が裁判長として出ています。一応検索をかけますが、この画像Bに関することばかりが出てきます。「-裁判」で検索をしたり、2005年2月21日以前で絞ったりしましたが、実在する人間なのかはわかりません。同姓同名のFacebookはありましたが、本人かどうかまでは不明ですなあ。

 

しかし10年前とはいえ、右上のタイトルや、裁判長の名前が載っている青い図形など、つくりがいかにもWORDのオートシェイプで手作りしました感が強いです。大体、テレビのニュースでこんな内容が放送されることも不可解ですし、そもそもこの画像は元は動画だったのか、何かの写真なのではないかという疑問も生まれます。

 

よって、無念ではありますが、恐らく画像Bはコラである可能性が大ではありますが、決定的な証拠をつかむことはできませんでした。コラだった場合、作られた経緯は以下の2つが考えられます。

 

①裁判所見学のニュース番組を元にして作られた画像。

②裁判所見学に行った際の写真を元にして作られた画像。

 

別テロップや文字なしの画像が出てこない以上、ネットにもともとある画像を加工したものではないでしょう。なので、②の場合、犯人は学校関係者になります。そして「菅○」くんは、同級生か、あるいは本人自身ということになるでしょう。誰か、この画像に写ってるの俺だ!って名乗り出てくれませんかね。

 

 

さて、まとめです。

 

私がちょっと驚いたのは、この画像たちに対して、無論、「いや、コラだろ」という反応は多いのですが、意外に真偽について斟酌せずにすんなり受け入れる反応も少なくないということです。特に、画像Bに対しては真偽について疑う論調が少ない。

 

結局みんな、「オレだけは騙されないぞ」と思っているわけです。でもこれは仕方ない。よく、「うそはうそであると見抜ける人でないと難しい」という言葉が引用されますが、果たして全ての情報に対して真偽を正確に下すことなど可能なのでしょうか。理屈では可能ですが、私たちは常に全力で情報の取捨選択をしているわけではないのです。むしろ私は、「うそはうそであると見抜くことは難しい」と構えていた方が気が楽ではないかなと思うのです。

 

そして話は川崎の事件に戻ります。

 

かの事件では、お定まりの実名報道をめぐる議論が起こっていますが、その情報の拡散については慎重になるべきだと思います。あなたが見つけたその情報は、ホンモノですか?拡散された情報は、果たして正しく使われるのでしょうか。ネットに溢れる正義の民は、「とりあえず私刑」にならないように、ぜひお気をつけください。