ネットロアをめぐる冒険

ネットにちらばる都市伝説=ネットロアを、できるかぎり解決していきます。

盆踊りとハロウィンの類似性を探る、誰に踊らされているのか

すこーし前のツイートですが、ハロウィンの若者の熱狂ぶりについて、話題になったものがあります。

 

 

若者がいつの時代も「今までなかった」ものを愉しむということは変わらない、という話ですが、ふーむ、盆に踊る習慣なんてなかったかな?と疑問に思い、ちょこっと私もツイートしたのですが、色々億劫だったので調べるのを先延ばしにしていました。ツイート主の方も、後のツイートで「東京で」盆に踊る習慣なんてないという意味だと補足されていますが、果たしてそうなのかな、というところを調べてみました。

 

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「Twitterで使えそうな名言」はオバマの言葉ではない、民主主義の総本山

記事にするほどでもないんですが、気になったので。

jin115.com

あるツイートで、クリントンの応援演説をするオバマのキャプチャ画像と共に、「ツイッターであおられて炎上するような人に核兵器はまかせられない」という彼の言葉と思しきものが拡散されています。

 

調べてみると、確かにオバマはその言葉を口にしているんですが、これは彼が作った言葉ではないんですよね、ということを記事にしてみました。

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「電車内の化粧」の歴史をたどる、「礼儀」を重んじる国

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さて、流れのはやいネットの中ではもはや旧聞に属するのでしょうが、東急の電車マナーの標語が話題になりました。

nlab.itmedia.co.jp

東急電鉄の広告(およびCM)で、「都会の女はみんなキレイだ。でも時々、みっともないんだ」というコピーと、実際に車内で化粧をする女性の写真をのっけています。まー、この1週間ほどの間に、本当にいろいろな賛否両論があったかと思います。

 

その中で、私が気になったのは、谷崎の『細雪』の中に、既に電車で化粧をする場面が出てくるというものです。

 

 

ツイート自体は4年前の古いものですが、結構リツイートしている人を見かけました。『細雪』なんてずいぶん昔に読んだきりなのでよく覚えていなかったのですが、改めて読んでみると、確かにありましたね。

 

「実は何ですよ、一週間程前のことですが、或る日わたくしが阪急電車に乗りますと、風上の方の隣の席に盛装を凝らした御婦人が掛けておられましてな、ハンドバッグからコムパクトを出して、こう―――鼻のあたまをパタパタ叩たたき始めたと思ったら、途端にわたくし、続けざまに二つ三つ嚏くしゃみが出ましたんですが、そんなことッてございますもんでしょうか」
「あははははは、それはその時、五十嵐さんの鼻がどうかしていらしったんじゃないでしょうか。コムパクトのせいかどうか分りませんわ」
「とまあ、わたくしも一度ならそう思うところでございますが、前にもそう云う経験がございまして、その時が二度目なんでして
「ああ、それほんとうでございます」
と、幸子が云った。
「―――わたし、電車の中でコムパクトを開けて、隣の人に嚏されたことが二三度ございます。わたしの経験を申しますと、上等の匂のするお白粉ほどそう云うことが起りますの」

*1

 

『細雪』の刊行自体は、私家版は1944年。冒頭の部分が中央公論に掲載されたのは1943年です。作品の時代設定は1936年~1941年ごろと言われています。確かにツイートのように、「電車内の化粧」自体が無作法である、とまでは言ってはいませんが、この頃から「日常風景」だったのでしょうか。

 

しかしながら、小説は小説ということで考慮しなければならない部分はありますので、いったい日本において「電車内の化粧」が、歴史的にどのように解釈されていたのか、というのを紐解いていきたいと思います。

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【訂正】「FREE Tea」を「無料」と勘違いした外国人はいるか、インド人はみんなカレー食べてる

【11/6 追記】

YahooAnswersの回答の訳に誤りがあったので訂正しました。

 

ちょっと前の話題ですが、「FREE Tea」という名称について物議を醸したことがありました。

togetter.com

ポッカが出している「FREE Tea」という紅茶のペットボトルがあるのですが、それをアジア系の外国人が「無料」だと思ってとってしまってひと悶着、という話。

www.pokkasapporo-fb.jp

 

この「FREE」はポッカさんにとっては「ストレスフリー」な意味だったような感じなのですが、英語圏の人にとって「FREE Tea」と来たら、「無料」の意味に捉えてしまったということでしょう。ツイート主は、このデザインを変えたほうがいい、というような結論をしています。

 

うーん、私も「FREE Tea」という表現を読んだら、確かに「無料」と捉えるか、あるいは、「砂糖か何か」が入っていないというどちらかの意味として考えるかな、と思います。しかし、だからといって、無頓着にとるかなあという感じもするので、そういうニュアンスを探ってみました。

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昏睡後にスペイン語をしゃべりはじめた少年は存在するか、心の汚れた大人たち

先日、スプートニクがアクロバティックな誤訳をしたことが話題になりましたが、以前私が書いた記事も相当アクロバティックでしたよ。

ibenzo.hatenablog.com

 

で、本日もそんなスプートニク発の話題。

 

jp.sputniknews.com

 

サッカーの試合中に頭部を蹴られたアメリカの少年が、昏睡状態から目覚めると、今まで話せなかったスペイン語を流暢に話したとのこと。

まー、ほんまかいなという感じのする内容だったのですが、調べてみると、一つの病気として認知されつつあるようでしたので、そのことを書いてみたいかと思います。

 


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【確報】「無礼で傲慢」とノーベル賞選考関係者はディランを評したのか

【10/23 14:46追記】

Wästbergの今回の件に関するコメントが届きました。

www.dn.se

DN(ダーゲンス・ニュヘテル)というスウェーデンの大手新聞社の記事です。「憶測で違う表現が伝わっている」として*1、こうコメントしています。

 

Det var säkert fem dagar sedan jag fick frågan ”Om Dylan inte hör av sig på många många veckor, hur skulle du då betrakta hans beteende?”. Då sade jag att ”Då måste jag nog säga att det vore oartigt och arrogant”. Adjektiven jag nämnde är inget att bry sig om, Dylan står både över och under allt sådant,

正確には5日前のことだったけど(訳注:10月18日のこと)、私はこう聞かれたんだ。

「もしこのままディランが長い長い間何も反応しないとして、そういった彼の振る舞いについてどう思われますか?」

それで私はこう答えたんだ。

「そのとき、私は無礼で傲慢な振る舞いだというべきなんだろうね」

私はこのコメントで、特に(彼の振る舞いは)困っていないということを伝えたかったんだ。それ以上でもそれ以下でもないよ。

つまり、記者の「仮定」の質問に対して、彼は「もしそうなら」という形で答えたわけです。だから、既に本記事で書いたとおり、SVTのコメントで彼は「Man」という客観的な人称代名詞を使い、「vad ska man tänka?(何を思えばいいかってこと?)」という表現を注意深く使ったわけです。SVTではかろうじて残っていたその表現が、他のメディアに英訳された際に、カットされ、推測され、意味が変更され伝わってしまったということなんでしょう。ちょっと言い訳くさいけど、おお、私が書いた通りではないですか!

 

彼は続けてこう言います。

 

– Vi var medvetna om att han kan vara besvärlig och att han inte gillar framträdanden när han inte står ensam på scenen, så vi räknade kanske med att det skulle hända någonting. Men jag tror ingen av oss räknade med att han skulle hålla sig absolut tyst, säger Per Wästberg.

Per Wästberg vill inte spekulera kring vad som ligger bakom pristagarens tystnad.

「我々は、ディランが気難しく、一人でステージの上に立つことを好まないことを知っていたし、恐らく何かがおこるだろうということも計算していた。けれども、ここまで全くの沈黙を貫くということは予想できなかったよ」

Per Wästbergはディランの沈黙の背景について推測することはしたくないと言った。

ある程度、ディランがネガティブな反応をするだろうということを、アカデミーの面々が予想していたということは前回記述したとおりです。ここまでのノーリアクションは予想外なんでしょうけど。

 

というわけで、このDNのコメントが正しければ、私が書いた記事はおおよそ正しいということになるんでしょう。あとは翻訳の間違いがなければ、これで確報としたいと思います。なにか思い違いしていないかちょっとドキドキしますが。

 

 

【10/23 10:43追記】

スウェーデン・アカデミーから、今回のWästbergの発言に関する公式の発表が出ましたので追記します。

www.svenskaakademien.se

アカデミーは「受賞者の決断に対していかなる見解ももたない」として、Wästbergがディランの返事が遅れていることに対して「失望を表明(uttryckt sin besvikelse)」したことについて、あくまで「個人的意見(personliga mening)」と強調しており、公式の見解ではないことを言っています。スウェーデン国内でも、この「無礼で傲慢」という発言はやはり強く聞こえたようです。

 

うーん、でも言葉の選び方に難があったとはいえ、個人的にはやはりWästbergの発言にはディランに対するリスペクトがうかがえるような気がするんですけどねえ(皮肉っぽいですが)。Wästberg自身のコメントがアップされたら、また追記します。

 

あと、ガーディアンの記事の訳し間違いについて訂正しました。

 

 

【追記終わり】

 

 

 

 

ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞したことも話題になりましたが、未だに彼が受賞について何のコメントもしないことも話題になっていて、とうとうノーベル賞の選考関係者からこんな話が出てきました。

www.nikkei.com

スウェーデン・アカデミーのメンバーが、スウェーデンの公共放送で、「この事態は予測しなかった」と語り、彼を「無礼で傲慢だ」と批判したということです。

 

私がひっかかったのは、「スウェーデン公共放送」という部分で、要は英語圏以外での発言ということです。こういう発言は、往々にして伝言ゲームのように歪められることが多いので、さっそく調べてみると、「これは誇張されている(もしくは誤報)のでは?」と思う反面、「このスウェーデン語の翻訳は正しいのか」という思いもあるので、最後までお読みいただきご判断いただければと思います。

 

*1:Man kan spekulera hit och dit om olika saker, men det gör vi inte, säger Per Wästberg, som även är Nobelkommitténs ordförande.がそれにあたるかと

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日本人は恋愛に受身なのか、ここテストに出るぞー

結婚しない人が増えているなんて話題がありますが、今回は内閣府の調査が話題になっています。

this.kiji.is

日本と欧州4カ国の男女の結婚観などを聞いた国際意識調査の結果を内閣府が発表し、恋愛については「「相手からアプローチがあれば考える」と答えた人が日本では34.9%で」「欧州に比べて受け身の姿勢が強い傾向が浮き彫りになった」とのこと。

 

それにしてもずいぶんそっけない書き方で、調査名すら記載をされていないところがいかがかなと思いましたので、もう少し詳細を本記事で掲載できればと思います。

 

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